構造力学
当分野は「地球と人間」そして「うるおいと豊かさ」を標語として掲げ、美しく、豊かで、快適で、便利で、安全で、健康で、活力のある社会の発展に柔軟に順応し、静的および動的かつ、短・中・長期的視点の広範な視点のもと、多様性社会の中の種々の構造物について拘束条件に縛られることなくそのデザインと力学にかかわる研究をおこなう。
教員
北根 安雄 ( Yasuo KITANE )
教授(工学研究科)
研究テーマ
鋼構造および複合構造の力学特性に関する研究を行っています。腐食した鋼構造物の残存耐荷力性能と合理的な補修方法、火災を受けた鋼橋の応答挙動と残存耐荷力性能、繊維強化プラスチックの構造部材への適用などについて主に検討しています。
連絡先
桂キャンパス C1棟 2階 252号室
TEL: 075-383-3160
FAX: 075-383-3163
E-mail: kitane.yasuo.2xkyoto-u.ac.jp
五井 良直 ( Yoshinao GOI )
助教(工学研究科)
研究テーマ
鋼橋を主な対象として、力学的特性の季節変動に対応した常時モニタリング技術の開発、ベイズ統計に基づく異常判別、信号処理過程の合理化による遠隔的異常検知、ならびに既往の点検技術との融合による効果的な維持管理手法の提案を目指した研究を行っています。
連絡先
桂キャンパス C1棟 2階 253号室
TEL: 075-383-3162
FAX: 075-383-3163
E-mail: goi.yoshinao.2rkyoto-u.ac.jp
松本 理佐 ( Risa MATSUMOTO )
助教(工学研究科)
研究テーマ
鋼構造物を対象に、残留応力制御による疲労強度向上効果の定量的評価、当て板接着による疲労損傷補修法の設計手法の確立、片面からの疲労損傷補修工法の開発等を行っています。
連絡先
桂キャンパス C1棟 2階 251号室
TEL: 075-383-3161
FAX: 075-383-3163
E-mail: matsumoto.risa.8zkyoto-u.ac.jp
研究テーマ・開発紹介
国際オンライン並列ハイブリッド実験手法の開発
これまでは必ずしも重要空間と考えてこられなかった、地下20キロメートルから地上数万キロメートルに及ぶ空間が21世紀を雄飛するための新しいフロンティアなると思われます。このような新しい空間の活用を可能にするためには、流体(水・風など)-地盤-構造物間の動的相互作用の的確な解明が必要となります。そのためには、種々の外力が同時に作用する場合を考慮できるよう、水槽実験装置と風洞実験装置、地盤試験装置、構造物試験装置などをネットワークで連結した国際オンライン並列ハイブリッド実験が有効であると考えられます(図-1の左図)。
昨今のインターネットの世界的な整備に伴う情報科学技術の発達により、コンピュータネットワークを用いて情報を共有することができるようになりました。そこで、コンピュータネットワークを通して正確かつ迅速に情報を伝達することができれば、これまで既存の実験施設のみでは不可能であった大規模な実験が、遠隔操作による分散環境下で可能になると考えられます。
そこで、国際オンライン並列ハイブリッド実験手法を開発し、図-1の右図に示すようなKorea Advanced Institute of Science and Technology(KAIST)と京都大学の実験装置をインターネットで結んだオンライン並列ハイブリッド実験を実施しました。この実験おいてLRB(Lead Rubber Bearing、鉛プラグ入り積層ゴム支承)を有する免震高架橋の地震時応答性状を評価でき、この手法の有効性を確認しました。
この実験手法を用いることで、多自由度構造物の動的相互作用を考慮した応答性状を評価・検討することが可能であり、国際的な研究の実施により地球上の複雑な物理現象の解明に大きく貢献すると考えられます。
図-1 国際オンライン並列ハイブリッド実験構想(左)とその検証実験(右)
鋼・複合構造物の力学性状の解明と合理的な設計法の構築
鋼は強度と靱性に優れた材料であるため、構造材料としてもっともよく用いられる材料の一つです。また、近年では数多くの新材料が開発され、鋼とともに複合材料として用いられることが多くなりました。
鋼はその優れた性質から、薄くて細長い構造部材としてよく用いられます。したがって、鋼・複合構造物では座屈現象(圧縮力を受けた際、その力の方向とは異なった方向に異常に大きな変形が生じる現象)を伴った力学性状を解明することが重要となります。そこで、鋼・複合構造物の力学性状を載荷実験や数値シミュレーションにより解明するとともに合理的な設計法の構築をおこなっています。
図-2は鋼製ラーメン橋脚(鋼でできた高架橋の門型をした支柱)の載荷実験の様子(左図)と数値シミュレーションの結果(右図)を示したものです。阪神・淡路大震災で観られたと同様の損傷を精度よく再現することができました。さらに、近年盛んに建設がおこなわれている鋼とコンクリートの複合構造である波形鋼板PCウェブ橋や任意方向から水平力を受ける鋼・複合構造物の力学性状の解明に取り組んでいます。
人が歳をとると体が徐々に衰えていくように、構造物も経年とともにその性能が低下してきます。多くの鋼構造物のストックを抱える日本にとって、これら社会基盤施設の維持管理が今後ますます重要なテーマとなるでしょう。そこで、鋼構造物の腐食を対象とした維持管理に関する研究もおこなっています。
図-2 鋼製ラーメン橋脚の載荷実験の様子(左)と数値シミュレーションの結果(右)
長大・超大型浮体構造物の動的応答解析手法の開発
「浮体橋」や「浮体式空港」などの長大・超大型浮体構造物は、波浪の作用によって生ずる構造物全体としての動揺とともに、構造物自身のたわみや加速度、応力といった応答量を精度良く評価することが、その機能性・安全性を保証する上で極めて重要となります。また、流体と構造物間でお互いの運動と力に関する諸量が影響を及ぼし合うために、流体-構造物間の動的相互作用を考慮した解析を実施する必要があります。
従来、理想化された簡単なモデルについての研究は数多くありましたが、現実のプロジェクトで要求されるのは、「複雑な海底地形場内に設置される単純でない形状(外部形状、内部構造を含めて)を有する超大型浮体」の応答予測であり、これは現在の最高性能を有する計算機をもってしても非常に解析の困難な問題です。
図-3は、「高速化グリーン関数法」という新たな解析手法を開発することで、実際の複雑な海底地形(リーフ海岸地形)内に設置される長さ1,500メートル、幅150メートルの超大型浮体のたわみ応答(左図)と、その時の浮体まわりの波浪場(水位の瞬時値)を解析した例(右図)を示したものです。この例では、海底地形と浮体の表面を合わせて67,098の未知数からなるパネルに分割し、並列計算機(IBM RS/6000SP 5CPU)を使用して、計算時間38.4時間です。現在は、さらなる高速化と、非線形現象を含めた解析手法への拡張を進めています。
図-3 複雑な海底地形場内に設置された超大型浮体(長さ1,500メートル×幅150メートル)のたわみ応答(左)と浮体まわりの波浪場の解析結果(右)