水際地盤学
人口、資産、社会資本が集中するとともに豊かな生態系が存立している河道、河口・沿岸域など、水と地盤が接する地域の多くは、未固結堆積物より構成された低平地です。そのため、洪水、高潮、津波、地下水流動,過剰土砂流入などの環境外力の作用により、氾濫、侵食、シルテーション、地盤流出、混濁流などによる水・土砂災害が発生しやすい。また気候変動による被害の深刻化も懸念されています。
これら流体―地盤系の複合災害過程の予測を可能とするためには、環境と調和したリスク軽減の方策の基礎学理の構築と実現象の観測が必要です。本研究室では、流体力学アプローチと土質力学アプローチの緊密な連携のもとに、河川・沿岸水理学、水際土砂動態論、乱流物質輸送論、ブルーカーボン等の融合研究を推進しています。また自然水域を自動観測できる新しいデバイスの開発も行っています。
当研究室の防災研究所における名称は、「気象・流域災害研究部門 水災先端計測研究分野」です。
教員
山上 路生 ( Michio SANJOU )
教授(防災研究所)
研究テーマ
河口の堆積土砂は,河川の閉塞リスクを伴う一方で,塩水侵入の防止や砂浜海岸の維持に重要な役割を担います.このような水際地盤の力学機構を解明するために,乱流水理学に基づく河川と沿岸域の融合研究を進めています.
連絡先
防災研究所宇治川オープンラボラトリー
〒612-8235 京都市伏見区横大路下三栖東ノ口
TEL: 075-611-0520
E-mail: sanjou.michio.6ckyoto-u.ac.jp
植生開水路の乱流現象と土砂輸送メカニズムの解明
河川における水災害リスクの低減と多様な水域環境の保全を両立するためには、河道内植生が流れ場・土砂輸送に及ぼす影響を適切に評価することが重要です。一方で、複雑な境界条件を有する植生開水路の乱流構造には未解明点が多く,さらなる基礎現象の解明が待たれます。本研究では水路実験において粒子画像流速計測法(Particle image velocimetry:PIV)による詳細な流速計測を実施し、植生群落や礫河床近傍における乱流場の三次元構造の解明に取り組んでいます。また、乱流中における土砂粒子の輸送メカニズムにも着目し、現象解明に基づいた樹林化河道における土砂輸送の評価手法の高度化を目指しています。
図:植生群落内外の土砂堆積の様子(左)、実験結果から得られた現象モデル(右)
砂浜―護岸系のダイナミクスと環境防災
日本の海岸線は慢性的に海岸浸食を受けています。これまでの日本では防災の観点から沿岸構造物の建設に注力してきたが、生活水準が向上していく内に国民の意識にも変化が表れ、海浜の、陸域と海域の多面的な利用が一体的に図れる重要な生活空間としての要請が高まりました。それを受けて、砂浜の造成などを含む新たな海岸保全の流れが生まれました.小さな波や流れでも大きく影響を受ける砂浜を防護するためには、海浜変形・海岸浸食の問題を正しく理解する必要があります。本テーマでは、乱流力学に基づく現象メカニズムの解明と護岸ブロックなどの海岸構造物への影響の評価を研究します。また、大潟波浪観測所の観測データを用いて、実フィールドへの応用にも取り組みます。
図:移動床水理実験で得られた沿岸土砂形状の時空間変化(左)、侵食が進む新潟県の大潟海岸(右)
砕波によるガス輸送とブルーカーボン
準備中
流木災害に関する力学的研究
豪雨時に流木が河道に流出し、洪水被害を大きくすることから、流木被害への対策が急務となっています。流木が橋脚に集積し、投影面積が大きくなることで橋脚にかかる力が増大し、鉄橋が崩落する事例もみられます。このような橋梁流出被害に対応するために、水路実験を行って橋脚に集積する流木塊の大きさ、橋脚にかかる流体力を詳細に調べている.また流木が河道に流出したときの流木対策工の研究も行っています。
図:橋脚での流木集積と抗力計測
土石流発生時に流木がどの位置に集中して存在しているのか,中小河川においてどれぐらいの流木が流れてくると橋梁部で全面閉塞するのかについては詳しい知見が得られていません。また直線河道で河道阻害せずに流木を捕捉できるシステムも考案されておらず、流木による水害に対して十分な対策ができていません.本研究室では屈折率マッチング法(RIM法)を用いて盛土の崩壊実験を行い、土石流の内部を透明にして内部の挙動を可視化計測し、土石流発生時の内部での流木の挙動を調べています。
図:流木混じり土石流の発生(RIM法)
開水路の人工粗度と土砂堆積ーセルフライニングー
準備中
自然水域の自律・自動観測ロボットの開発
準備中