砂防工学
流域の健全な土砂環境を創造するための総合研究
砂防工学は、安全と環境の両面で健全な流域を創造するための技術開発に向けた学問で、土砂水理学、水文学、地形学、地質学、生態学など幅広い分野を包含しています。
本研究室では、「防災」と「環境」という2つのキーワードのもとで、流域の土砂の侵食・堆積や流出の把握や制御に関するテーマや、健全な流域の土砂環境を維持するための技術開発に関連した研究を進めています。
教員
中谷 加奈 ( Kana NAKATANI )
教授(防災研究所)
研究テーマ
山間部から発生する水・土砂の流出、土石流や流木などの土砂災害のメカニズム、防災対策に関する研究を数値シミュレーション、水理実験、調査や観測をもとに実施している。
連絡先
防災研究所宇治川オープンラボラトリー(流砂災害研究領域)
TEL: 075-611-5263
E-mail: nakatani.kana.4zkyoto-u.ac.jp
山野井 一輝 ( Kazuki YAMANOI )
准教授(防災研究所)
研究テーマ
流域における土砂の生産・流出,および土砂の影響を考慮した降雨流出・氾濫過程に関する数値シミュレーションを構築している.またこれらを用いて,土砂の生産が洪水氾濫に及ぼす影響の評価や,豪雨災害による被害推定,および土砂災害の警戒避難に関する研究を行っている.
連絡先
防災研究所宇治川オープンラボラトリー
〒612-8235 京都市伏見区横大路下三栖東ノ口
TEL: 075-611-4397
FAX: 075-611-4397
E-mail: yamanoi.kazuki.6skyoto-u.ac.jp
研究テーマ・開発紹介
土砂災害の防止・軽減に関する研究
斜面崩壊や土石流による土砂災害の防止と軽減は、社会的に重要な課題です。そこで、土砂災害の発生機構、予測手法、ハザードマップの高度化などについて検討しています。山間部からは土砂だけでなく流木も流出することで橋が閉塞して、被害をもたらすこともあります。危険な橋や流木の条件を実験や解析から明らかにすることや、気候変動を考慮した土砂災害の特徴を考慮した対策の検討も重要なテーマであり、研究を進めています。
山間部で崩壊や土石流により発生した土砂が、長時間、長距離にわたって下流へ流出して、河道を埋塞して溢れることにより被害が発生する土砂・洪水氾濫が近年問題になっています。現象把握のための調査、観測、シミュレーションによる検討を進めています。
図-1 住宅地での土石流シミュレーション(左)、
下流側の土砂・洪水氾濫のシミュレーション(右)の堆積過程
土石流は甚大な被害をもたらす現象で、数値シミュレーションによる予測も実用化されています。しかし、土石流の挙動や流動メカニズムは完全に解明されているわけではありません。殊に細粒土砂を多く含む土石流では、流動性が高くなることが知られています。
そこで、土石流の流動性に影響する細粒土砂の含有率を現地で観測し、挙動の解明とモデル改良を目指した研究を行っています。写真は矢印が観測施設で、土石流の内部の情報を得るための計測の様子(右、出水時)を示しています。
図-2 土石流中の細粒土砂の含有率の観測(矢印が観測施設、右・出水時)
流砂系の土砂動態に関する研究
山地流域で土砂が生産され、河川を通り海へ流出する過程(流砂系)は良好な流域環境を維持するための本質的な要素です。土砂管理を行う際に、山地から河口までの土砂動態を詳細に把握し、将来の土砂環境予測を精度よく行うことが望まれます。
そこで、土砂生産および土砂流出プロセスについて、現地観測、実験および数値解析による解明を試みています。土砂生産や流出を制御するための新工法、河床変動解析モデルなど、土砂管理のための新しいツールの開発も行っています。
図-3 穂高砂防観測所において、足洗谷観測水路で掃流砂を観測するためのハイドロフォンを用いた現地実験(左、中央)や流砂観測を実施している(右)様子
豪雨や噴火等による土砂災害発生時には、多量の土砂が流域に供給されます。土砂によって生じる土砂災害だけでなく、健全な環境保全のために土砂を資源として活用する方法を含めた総合的な土砂管理手法を検討します。
流砂系の健全な土砂流出に関する研究
山間部から発生し、下流まで流出する土砂や流木を、全て構造物で制御することは困難です。被害を出すことなく「無害化」して、巨礫や流木は砂防堰堤で制御する、細かい土砂は濃度や粒径、流砂量をコントロールしてバイパス水路や流路・道路を通じて安全に流出させる、土砂の一部は公園やグランド等を遊砂地として活用して堆積させるなど、土地利用を考慮した対策が今後必要になると考えます。
調査、観測、シミュレーションを活用して、砂防分野だけでなく河川やダム等の連携分野と協力することで、安全な街づくりを提案することを目指しています。