応用地球物理学

「地下を覗く、覗けないものは測る」

21世紀を支えるエネルギー資源の開発、地下空間の有効利用や地球環境の保全といった地殻に関する諸問題の解決には、地下を覗くイメージング技術、覗けない対象には実験や計算で再現するアシミレーション技術の開発が重要です。

本研究室では、弾性波動や電磁波などを用いた非破壊かつ遠隔で行う物理探査技術の開発や、地下の状況把握に重要な情報である断層摩擦に関しての実験的数値的研究を行っています。これらの研究は、地球物理学の知識を総動員するだけでなく、地質学、地震学、弾性学、電磁気学、表面工学など、理学工学を問わず多方面の分野と連携しつつ行っています。

教員

福山 英一( Eiichi FUKUYAMA )

教授(工学研究科)

福山英一190408研究テーマ

大型岩石剪断摩擦実験や、複雑断層系の破壊伝播シミュレーションといった、岩石破壊力学や岩石摩擦動力学に軸足を置いた研究を通して、これまで実測が難しかった地殻の強度やそこに働いている応力の推定に関する研究を行っています。大型岩石摩擦試験機は世界的にも非常にユニークな試験機であり、そのデータから、摩擦の断層すべり面サイズ依存性や断層面を伝播する破壊フロントの詳細な解析が可能となっています。また、境界積分方程式法による3次元断層系を伝播する破壊計算により、岩盤にかかる応力や強度の評価に関する知見が得られています。

連絡先

桂キャンパス C1棟 1階 112号室
TEL: 075-383-3209
E-mail: fukuyama.eiichi.3x@kyoto-u.ac.jp

武川 順一 ( Junichi TAKEKAWA )

武川 順一准教授(工学研究科)

研究テーマ

資源・エネルギー開発,地震防災,地球環境の保全といった地殻に関する様々な問題の解決には,地殻を構成する物質である岩石の力学的・工学的性質の把握が重要な課題となります。岩石の力学的・工学的性質は微視的な亀裂の存在に大きく依存するとの視点から,地殻を伝播する弾性波動やそれに伴って生じる破壊現象,また,岩石の破壊現象やそれに伴って生じる流体流動に関して,数値解析的なアプローチで取り組んでいます。また,これに伴う様々な数値解析手法の開発・適用性の検討などにも取り組んでいます。

連絡先

桂キャンパス C1棟 1階 113号室
TEL: 075-383-3197
FAX: 075-383-3198
E-mail: takekawa@tansa.kumst.kyoto-u.ac.jp

吉光 奈奈 ( Nana YOSHIMITSU )

助教(工学研究科)

研究テーマNanaYOSHIMITSU20240820.JPG

資源採掘や地熱発電エリアで発生した地震の波形解析から、地殻のモニタリングにとって重要な応力や不均質状態について調べています。さらに、岩石試料や光弾性媒質を使った地殻の模擬実験や、独自のフィールド観測を実施することで、オリジナルの小スケールデータと自然スケールの記録を相互にインタラクションさせ、破壊現象の詳細な理解を目指しています。

連絡先

桂キャンパス C1棟 1階 111号室
TEL: 075-383-3195
E-mail: yoshimitsu.nana.6i@kyoto-u.ac.jp

研究テーマ・開発紹介

社会基盤と地盤環境の整備のための物理探査による地下浅部調査

地下はまさに「一寸先は闇」。人間活動の及ぶごく浅部であっても、その先の地盤や岩盤の地質や物理的性質を知ることは非常に難しい問題です。また、地質構造だけでなく地下水や汚染物質の地中での広がりを地表から3次元的に把握できる手法は物理探査だけです。

当研究室は、このような社会基盤および地盤環境の整備のために不可欠な地下浅部調査への物理探査技術の適用例として、

  • 弾性波を用いたトンネル切羽前方の探査
  • S波浅層反射法による河川堤防の堤体内部の空洞調査
  • 地中レーダを用いた既設管の検知とその材質の予測
  • 物理探査技術を用いた地盤改良工法や環境浄化工法のモニタリング

などの研究を実施しています。

図-1は弾性波を用いたトンネル切羽前方探査の適用例です。トンネル前方に2箇所の弾性波の反射面が現れています。これにより、掘削の進行に先立って、地質構造の急変部の位置や方向および傾斜、物性変化を予測することが可能になりました。

トンネル切羽前方探査の結果得られた地質構造の急変部のイメージ
図-1 トンネル切羽前方探査の結果得られた地質構造の急変部のイメージ
(a) 概念図 (b) 3次元イメージングの結果 (c) 推定した地質変化面

新しいエネルギー資源の探査および開発のための地下深部調査

21世紀の産業発展を支えてきたものは石油・天然ガスといった化石燃料であると言っても過言ではありません。地下数千メートルもの深度に存在するこれらのエネルギー源の探査・開発に物理探査技術は不可欠です。3次元地震探査反射法技術により断層、褶曲などの複雑な地下構造を3次元的に可視化し、過去の堆積環境を把握して、地史を完全に復元することが可能になっています。

また、新しいエネルギー資源の探査開発のために、以下のようなターゲットに対して物理探査技術を適用する研究をおこなっています。

  • 海底および永久凍土層下Mに存在するメタン
  • ハイドレートの探査と生産のモニタリング
  • オイルサンドの水蒸気圧入回収法のモニタリング
  • CO2ガスの炭層固定と炭層からのメタンガスの回収・生産のモニタリング

図-2は3次元地震探査反射法によって得られた地下構造のデータ・ボリュームです。任意の断面を抽出したり、物性値を計算したりすることが可能です。

3次元地震探査反射法によって得られた地下構造データ・ボリュームの図
図-2 3次元地震探査反射法によって得られた地下構造データ・ボリューム

高分解能な地下情報可視化技術(ジオトモグラフィ)とその応用

医学の分野ではX線CTやMRIといった技術により人体を切断せずに人体の断面図や立体画像を得ることができます。それと同様の考え方を地下探査に応用した技術がジオトモグラフィです。探査対象を取り囲むように配置したセンサーによってデータを取得し、コンピュータ処理をおこなうことによって媒質内部を伝播する弾性波の速度分布やエネルギーの減衰特性分布、比抵抗分布などをカラー・イメージ表示することができます。さらに3次元分布を表示することも可能になっています。

本研究室ではこの技術の基礎研究からプログラム開発、さらには以下のような実問題への応用を研究しています。

  • 波形インバージョン手法による破砕帯の高分解能イメージング
  • 比抵抗トモグラフィによる環境浄化工法の効果のモニタリング
  • 3次元弾性波トモグラフィによるダム計画現場の破砕帯の3次元分布の把握

図-3は3次元弾性波トモグラフィによって得られた地下の3次元的な速度分布です。上図は4本のボーリング孔を用いて得られたボーリング孔間の速度分布で、下図は別の現場の岩盤内の破砕帯の3次元分布を示したものです。

3次元弾性波トモグラフィによって得られた地下の3次元的な速度分布
図-3 3次元弾性波トモグラフィによって得られた地下の3次元的な速度分布

研究室ウェブサイト

http://tansa.kumst.kyoto-u.ac.jp/