防災水工学

本研究室では、洪水・土砂災害や高潮災害などのいわゆる水災害の発生機構及び被害の防止・軽減方法について、観測・水理模型実験・数値実験の手法を用いた研究をおこなっています。ここでは、水理学・水工学に係わる現象の基礎的な研究と共に、水防災施設の自然環境や生態系との調和を目指した応用的な研究が進められています。

本研究室は防災研究所宇治川オープンラボラトリー(前身は1952年に設置された宇治川水理実験所、敷地面積68,700平方メートル)内にあり、長大水路や大規模平面水槽をはじめとする30余りの施設を活用した実験が進められています。この他、ADCP(超音波ドップラ流速分布計)などによる観測、各種水理現象に関する数値モデルの開発もおこなっています。

教員

中川 一 ( Hajime NAKAGAWA )

中川 一教授(防災研究所)

研究テーマ

土石流の規模およびその氾濫危険範囲の推定方法、高度に都市化した地域での洪水氾濫解析法や流木等の漂流物の流動解析法、有効な対策法等の開発とその効果の評価に関する研究および治水と環境の両立を図るための土砂管理のあり方、水理構造物の機能評価等の研究をおこなっている。

連絡先

防災研究所宇治川オープンラボラトリー
〒612-8235 京都市伏見区横大路下三栖東ノ口
TEL: 075-611-4395
FAX: 075-612-2413
E-mail: nakagawa@uh31.dpri.kyoto-u.ac.jp

川池 健司 ( Kenji KAWAIKE )

川池 健司准教授(防災研究所)

研究テーマ

近年わが国で多発している豪雨災害に対して、その被害規模(浸水深、流速、浸水エリアがどの程度まで達するか)を予測するための数値解析法に関する研究、ならびに排水機場、排水路、水門、下水道などの対策による浸水被害軽減効果の評価に関する研究を行っています。

連絡先

防災研究所宇治川オープンラボラトリー
〒612-8235 京都市伏見区横大路下三栖東ノ口
TEL: 075-611-4396
FAX: 075-611-4396
E-mail: kawaike@uh31.dpri.kyoto-u.ac.jp

研究テーマ・開発紹介

洪水流の3次元構造とその応用

流れの構造は境界形状により異なったものになることが広く知られています。そこで、種々の形状を有する水路を対象に、まず流れの構造を検討する方法として速度計測・水位計測・流況の可視化をおこなっています。また、流れの作用を検討する方法として、壁面せん断力分布の計測・圧力分布の計測・河床形状の計測・可視化法を用いています。得られた流速分布、2次流の分布、渦構造や2次流の可視化結果などから、固定床における直線水路および複断面蛇行水路における流れの3次元構造、流れの構造と壁面せん断力分布の関係、流れと河床形状の関係などについての知見が得られています。

現在、洪水時の流れの構造およびその作用と護岸・堤防被災の関係、および環境と調和した河道計画の基礎資料を得るため、環境保全構造物が設置された場合や高水敷上に樹木やわんどなどがある場合など、より複雑な境界条件での検討をおこなっています。

洪水氾濫と遊水の水理

最近、土地利用も考慮して河川の特性に応じた流域対策を検討し、霞堤や遊水池による洪水の氾濫も考えるという治水方式が提案されました。このような氾濫を伴う場合の治水対策を具体化するためには、現地調査による洪水の実態の把握と、実験的検討が重要です。このため、1998年8月に発生した余笹川の超過洪水による災害の実態を調査と、その際に起こった典型的な水理現象に関する実験的検討を進めています。また、霞堤や水害防備林によって洪水を遊水させる治水方式を採用している桂川(亀岡)や由良川(福知山周辺)を対象として、洪水時の水理の調査や流況観測と、その結果に基づく洪水遊水時の水理に関する実験的検討をおこない、洪水氾濫・遊水の水理現象を明らかにするとともに、そのような伝統的な水害対策の効果についても検討をおこなっています。

これらの研究によって、氾濫を伴う洪水に対しても、トータルの被害が小さく、総合的な安全性が高まるような治水対策の具体化へと繋がることが期待されています。

土砂移動現象に関する観測実験

流砂の時空間的な不均衡によって様々な土砂災害が発生します。例えば、山地域では豪雨・火山活動・地震が誘因となって土石流・火砕流・泥流・斜面崩壊といった急激な土砂の生産と移動が生じ、一方で砂防ダムや貯水池の堆砂、河岸侵食、橋脚周りの局所洗掘などの比較的緩慢な土砂移動現象も生じて災害を引き起こします。これらの土砂移動現象が発生する機構を観測と実験で明らかにするとともに、現象のモデル化を図り、数値シミュレーションによる土砂移動現象の予測および土砂災害防止のための有効な対策方法などについても研究しています。

研究の一例として、水制による舟運のための航路維持の可能性を検討するため、長さ222メートルの大型水路を用いた移動床水理模型実験(幾何縮尺70分の1、河床材料としては粒径0.6ミリ・比重1.37の石炭分を使用)がおこなわれています。また、1999年にベネズエラのカムリグランデ流域で発生した土砂災害を対象として、扇状地上での土砂氾濫・堆積を再現する数値シミュレーションをおこない、砂防施設の配置の効果を検討しています。

沿岸域における流動の解析

沿岸域は人間活動と密接に関連する水域であるため常に高い関心を集めています。この水域における流動は、風・波・密度さらには地球自転の効果などの影響が、大気・海岸・陸岸・海洋の4つの境界に囲まれた領域に作用する結果、非常に複雑な様相となります。 そこで、沿岸域の流動場を明らかにし、沿岸環境の保全、海岸災害の防止・軽減を図るため、実験、数値解析または現地観測によって研究を進めています。

研究の一例として、大規模水理模型(大阪湾水理模型:水平縮尺5000分の1、鉛直縮尺500分の1)を用いた可視化実験がおこなわれています。実験結果からは、大阪湾内の潮流や明石海峡から流入する水塊の挙動が捉えられており、その妥当性が衛星観測や現地観測によって確かめられています。 また、洪水時に河川より流出した流木の湾内での挙動を検討するための数値シミュレーションモデルが開発され、潮流場と実風場に基づいた解析がおこなわれています。

河川環境の保全に関する研究

水域環境を保全または復元し良好な状態で次代に受け渡すことは、水工学分野における今日的な課題です。実際の川作りの現場においては、従来の単純化・簡素化から複雑化・多様化へと既に大きく踏み出しており、そのような観点からの河道設計・改修の例も数多く見受けられるようになってきましたが、環境面からは良いとされるそのような配慮が治水の面においても受け入れられるとは必ずしも言えないこともあります。にもかかわらず、そのような河道の水理特性に関しては、形状の多様さや流れの複雑さから十分な検討が未だなされておらず、不明な部分もかなり存在します。

水域環境の保全や復元を念頭においた検討対象は非常に広範ですが、防災面と自然環境や生態系との調和を目指した構造物の代表例として水制群やわんどを取り上げ、それらがもたらす流速の低減効果や土砂の補足機能について、実験および現地観測により検討を進めています。ここでの検討結果により、わんどの形成過程の解明をはじめとして、望ましい水辺空間の創造とその保全を支えるためのバックボーンとしての新たな水工学の構築を目指しています。

研究室ウェブサイト

http://rcfcd.dpri.kyoto-u.ac.jp/rdps/default.html