防災技術政策

教員

佐山 敬洋 ( Takahiro SAYAMA )

TakahiroSAYAMA20230328教授(防災研究所)

研究テーマ

安全で持続可能な社会の実現に向けて、水災害リスクを管理するための防災技術政策論に関する研究を進めています。水文学・水工学・災害リスクマネジメントを基軸に、(1)洪水流出の現象解明とモデリングに関する基礎研究、(2)水災害の予知・予測に関する技術開発研究、(3)社会変動・気候変動を踏まえた水災害リスクの評価と軽減に関する応用研究を三本柱として研究を進めています。

連絡先

宇治キャンパス E棟 310号室
TEL: 0774-38-4125
FAX: 0774-38-4130
E-mail: sayama.takahiro.3u@kyoto-u.ac.jp

Florence LAHOURNAT

講師(防災研究所)

研究テーマ

連絡先

Eva Mia Siska YAMAMOTO

特定助教(防災研究所)

研究テーマ

連絡先

研究テーマ・開発紹介

統合ハザードモデルの構築:マルチハザードの研究に向けて

気候変動の適応策を検討するうえでは被害と対策を総合的に分析する必要があり、マルチハザードの視点が不可欠です。洪水災害と土砂災害や、洪水災害と高潮災害など、これまで十分に検討が進んでこなかった複合災害について研究を進めます。2022年度より開始した文部科学省の気候変動研究プログラム「先端プログラム」において、当研究分野では、学内外の研究者と共同し、様々なハザードモデルを統合するプロジェクトを推進しています。これまで開発を進めてきた洪水予測モデル(降雨流出氾濫モデル: Rainfall-Runoff-Inundation: RRI Model)の更なる発展を進めるとともに、他の研究者が開発した様々なハザードモデル、具体的には、高潮・波浪モデル、大気陸面モデル、土砂モデルなどを統合する共通プラットフォームの開発を地球シミュレータも活用して進めています。構築した統合ハザードモデルを用いて、例えば、同じ気候変動シナリオで、様々な風水害がどのように激甚化するのか、その変化傾向はハザードによって異なるのかなど、複合災害に関しても未解明の課題に取り組みます。

Fig1
図-1 気候変動予測先端プログラムで開発を進める「統合ハザードモデル」の構成

洪水流出の現象解明とモデリング:水災害の予測に向けて

当研究分野の主軸ツールであるRRIモデルは、広大な平野部を有するアジアの河川流域に適するモデルとして従来の分布型流出モデルを発展させ、水位や氾濫を一体的に予測できるモデルとして開発を始めました。最近では、同モデルを基軸として、日本全国の中小河川を対象とした洪水予測システムの開発研究に取り組んでいます(図2)。現在開発を進めている全国版RRIモデルは、日本全国を150 mの細かさで覆い、観測情報が不十分な中小河川においても流量や水位を推定することが可能です。また、開発した全国版RRIモデルをリアルタイムで運用し、洪水予測の実践的な研究を進めています。現在は、さらにそれを発展させるべく、被害推定に関する研究も進めています。

Fig2
図-2 中小河川を含む日本全国の河川を対象としたリアルタイム洪水予測システムの開発と長時間予測の研究

水災害をもたらす流域場の研究

降雨、流出、水位、浸水、被害の応答関係を予測するのが水災害予測研究の技術的な目標です。ただし、水文学、水工学のサイエンスとしては、その背景にある環境場と現象との関係を解明することが重要であり、それが予知・予測の高度化にも不可欠です。特に、流域場と流出の関係、河道と水位の関係、氾濫原地形と浸水との関係など、その現象を作り出す背景には様々な環境場があります。どのように流出を予測するかという実務的な目標達成に加えて、水文学の基礎を探求して洪水流出の研究を進めています。

Fig3
図-3 「水災害予測の研究」・「水災害をもたらす環境場の研究」のフレームワーク

東南アジアの河川流域を対象にした社会変動・気候変動の研究

東南アジアの河川流域を対象にして、災害と環境の課題について包括的な研究を進めています。留学生と一緒にその国の地域課題を研究することは、基礎的技術・知見の国際展開を図るうえでも、海外の事例を学んで国内の課題を相対化するうえでも有効なアプローチと捉えています。これまで対象としてきた、スマトラ島の河川流域、メコン川流域、パキスタンのインダス川流域などの事例研究を振り返ると、それぞれ抱えている社会的課題が非常にダイナミックなものです。水問題を解決するうえで、周辺の課題も把握して、その将来的な変動を予測することが重要です。気候変動の分析を踏まえて、持続可能な社会実現のために必要となる技術や方法論の研究を国際的な視野で取り組んでいます。基礎的技術・知見の国際展開を図るうえでも、海外の事例を学んで国内の課題を相対化するうえでも有効なアプローチと捉えてきました。

Fig4
図-4 インドネシア・スマトラ島の熱帯泥炭地を対象にした土地利用変化・気候変動が洪水氾濫や泥炭火災に及ぼす影響の分析

研究室ウェブサイト

http://flood.dpri.kyoto-u.ac.jp/